小説「政権奪取!」 16


 渡部と隅田が新幹線から降りた時、室井良子の街宣車が駅前に既に到着し、今までに見た事のない群衆と大挙して押し寄せたマスコミ陣で駅前は大混乱していた。二人は予め用意された駅舎内の一般人立ち入り禁止の事務室から室井の第一声を聞く事にした。

「皆さん、私がこの度の衆議院選でこの選挙区から立候補させて頂く事になりました、室井良子です。私はこれでも誰かさんと違って、小学校も中学校も高校までもこの選挙区での卒業生です。この駅前に集まってくださっている方達の中にも必ず私と同じ小学校出身の方、中学校出身の方が居られるはずです。お父さんがとても偉大で立派なお方だったかも知れないけど、この選挙区に殆ど住んだ事なくして、小選挙区の代議士になる事に私は、些か疑問があります。だから私はここから立候補する事にしました。
 私が当選したら、まず最初にこの立派な新幹線の駅にこの選挙区の最大の強みである三つの三次救急対応可能な病院の救急救命施設を造り、屋上にヘリポートも併設し、JRの協力を取りつけ沿線の大病院とリンクさせる事で高度先進医療としての特徴を持つ街づくりをします。その際、選挙区の皆さんには臓器提供カードへの記入をお願いして、かわりに皆さんが救急救命要請をしたなら直ぐに対応して貰える仕組みにし、皆さんの安心と命を守ります。新幹線やヘリコプターを使えば仮に東京への搬送もヘリで一時間以内、新幹線でも二時間以内で可能です。この地の利を活用しない手はありません。
 交通対策としては、赤字だといってバサバサ着られてしまっているバス路線に代わる交通手段を考えます。これでは、車に乗れないお年寄りと高校までの学生がまるでイジメに遭っているに等しくなります。具合が悪くなっても帰りのバスが無いから早退もできない。だから私は、この選挙区をモデル都市にしてスキー場にあるあのゴンドラリフトを新しい交通システムとして導入します。6キロ先までを20分くらいで移動できるから、混雑時にはバスや乗用車よりずっと早く着く事ができます。後の政策は追々にお話しさせて頂きます。本日は私の立候補の応援に遠路遥々駆けつけてくれた、村木琢磨さんをご紹介致します。彼もこの度私が党首を務める保守党、比例近畿ブロックより立候補され京都から駆け付けてくれました。それでは村木候補へマイクを譲ります。皆さんどうぞ拍手で迎えてあげてください。」

(室井の完璧までの第一声であった)

「会長、流石室井さんですね。こんな政治家の第一声って聞いた事ありませんよ。」

(隅田が言った)

「私も聞いた事ない。」

(渡部が拍手しながら言った)

「皆さん、只今ご紹介頂いた、この度保守党より、衆議院比例近畿ブロックより立候補した村木琢磨です。今日は、僕が所属する保守党党首の室井良子先生の応援の為に伺いました。ところで、皆さん僕、以前総理大臣やった事あるんだけれど知っています?つい最近までは官房長官もやっていました。だんだん地位が下がって、今度は立候補者をやっているんですけど・・・・実は僕が立候補を決めたのは、最近の総理大臣を見ていると俺の総理大臣よりひどいじゃん、という場面を見るにつけ、この国に不安を感じていました。そうした時に室井党首が保守党を立ち上げて、政権を奪取する決意を伺い、元総理、元官房長官をやった事のある僕でお手伝いできる事があれば、という事になり比例近畿ブロックから立候補する事にしたのです。現政権下でアメリカに日本の総理大臣がルーピーとばかにされたり、オバマ大統領の演説の後になると空席だらけの会場でスピーチを行わなければならない惨めな姿を見ているのに、非常に良い反応が伝わってきたなんて平然とウソを言わなければならない総理大臣の姿にがっかりしちゃいました。
 どうですか、皆さん室井良子先生みたいに凛とした美しさを持ち、それでいて毅然とした態度で真正面から正論をぶつけてくれる。そんな総理大臣が居てくれたらと思いませんか?僕は、そんな人として非常に尊敬する室井先生に一度総理大臣になって頂いて、僕がドラマで演じた総理大臣像以上の総理大臣になって頂きたく、本日こうして室井先生の立候補第一声に合わせて応援に掛け付けました。どうか皆さん投票日には、室井良子と平仮名で書いても、貴方が書いたなんて誰にもわかりません。決して恥ずかしくないですから間違わない様に、無理に漢字でなくていいですから室井良子と書いて投票してください。尚僕を当選させてくれるなら名前の村木琢磨ではなく、政党名の保守党と書いて下さいね。よろしく!」

(村木琢磨は盛大な拍手で迎えられ、同じく盛大な拍手で街宣車を降りた)

「会長、それにしても俳優って流石演説が旨いんですね。あっという間に聴衆を自分に惹き付け、もう魔法に掛かった様にみんな頷きながら聞いていましたよ。凄いなあ。」

(隅田がつくづく感心して言った)

「いや、彼が特別なんだ。だから私は秘密兵器として使うんだ。前に君も言ったように総有権者数の六割以上の女性票をどう掴むかが今回の選挙の勝敗を決める。党首を室井女史、脇を彼で固める事で、バラマキ政策に目がくらむ有権者を取りこぼさない様にせんといかんだろう。」

(渡部が言った)

「そうですね、今回もバラマキ政策できますかね民政党は・・・」

(隅田が半信半疑で言った)

「多分な。」

(渡部の返事は素っ気なかった



to be continued...





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