小説「政権奪取!」 14


 第五章 「政権奪還!誕生女性総理」

 政党名、政党綱領、主な政策が全て揃い、いよいよ残すはメンバー選考だけとなった。

そこで彼らは、用意周到に参議院から着手していった。それも三年後改選を控えた二名区の議員から口説き落としていった。参議院で二名区の選挙区は、人口でいうと二百万人以上の選挙区で政治資金の確保と選挙区への知名度をどう上げるかが一番の悩みなのだ。従って選挙資金の提供や室井党首の知名度はとても魅力だった。

こうして参議院の二名区、一名区で約過半数近くが集まった。残りの三名区、五名区は難なく集まった。そして参議院で過半数を確保した後、主戦場となる衆議院に着手した。ただ、この衆議院では三分の二を目指すのかと思ったが、目標は二百七十から三百に設定された。これは彼らが政権を奪取して政策を進める時に、いの一番にやるべき事が国会議員の定数削減であり、特に比例当選の議員はその際の抵抗勢力になりかねず、参議院を確実に抑えた以上、徒に衆議院で三分の二を持つ必要もなかった。そんな訳で、人選はあっけ無いほどスムーズに運び、三百名で打ち切るという形で終わった。後は現政権からの切り崩し対応と、もう一度世論が失望するような失政が生じたら、衆議院で内閣不信任案を提出可決し同時に参議院でも総理大臣以下閣僚全員の問責決議案を可決する手はずになっていた。

 そしてその時がやってきた。アメリカが現政権に対して、普天間に代わる辺野古への移転が期限である二〇一四年までにできないとアメリカが判断した時点で、日本政府が言いだして決った普天間基地の移設案が白紙撤回され、結果として従来通り普天間基地を今後も使用し続ける事になると現政権を揺さぶってきたのである。この最後通牒に現政権は大混乱し、政権内部で責任のなすりあいが始まり、当初は沖縄県民の同意を得た上でと言っていた約束も反故にして、憲法の規定である条約の順守を理由にアメリカ軍基地移転は安保条約の延長線上の高度な政治判断である、と屁理屈をつけ沖縄県及び名護市の同意を必要とせず総理大臣の専決事項として閣議決定を持って建設に着手すると内外に記者発表してしまった。

 流石にこれには民自党が黙っておらず衆議院で内閣不信任案、参議院で問責決議案を提出する事になり、現内閣は造反には除名で臨むと所属議員に対する強硬な締め付け、拘束で臨んだにも拘らず、否決できる目処が立たずに已むなく解散総選挙に打って出たのである。

 その頃、緊急に会長室に集まっていた、大勲位、渡部、隅田、室井、久保、平城、の面々は一様にしてやったりという思いでいた。

「いよいよだ、皆抜かりなきよう頼むぞ!」

(何時もの様に大勲位が偉そうに言った)

「室井さん、記者会見は東京でやるのか、選挙区でやるのかどっちだ?」

(渡部が叫ぶように言った)

「勿論、両方でやります。」

(室井が当然と言わんばかりに言った)

「記者会見用のホテルの手配は済んでいるのか?」

(渡部が言った)

「ご心配要りません、東京での会見場には私の理事長室を使います。選挙区は用意して頂いた選挙事務所でやります。」

(室井が言った)

「入りきるのか?選挙区はともかく、東京の場合、君の理事長室では狭くないのか?」

「入りきらない程に見えたほうが、マスコミ戦略としては良いと考えています。」

(室井はきっぱりと言った)

「一番警戒しなければならないのは、現政権がマスコミ支配や警察権を使って選挙妨害の嫌がらせに出てくることだ。その対応を怠りなく頼む。」

(渡部が皆に向かって言った)

「とにかく天下分け目の合戦の火ぶたが切られた訳だから、各自死力を尽くして頑張りましょう。」

(隅田が緊張した面持ちで言った

「それでは各自持ち場に散って、それぞれの任務に臨んでくれ。」

(渡部が指揮官の様に言った)

 そこに集まっていたメンバーはそれぞれの持ち場へと散っていった。久保と室井は保守系シンクタンクのあるビルへ、隅田は自身の新聞社へ戻り、情報集めといち早く室井良子の記者会見が東京と選挙区の二か所である事をたまたま聞きつけたとして、取材班にリークした。東京での記者会見を終えると、室井良子は久保を伴って慌ただしく新幹線で選挙区へ向かっていた。

「理事長、未だ油断はできないぞ。今日解散しても公示まで約二週間あり、選挙期間が12日間だから約一カ月の長丁場になる。何が起きてもおかしくない。その間自分の選挙と党首としての選挙の両方をやる訳だから、無理は禁物だよ。」

(久保は父親の様な思いで言った)

「ありがとう、心配してくれて。でも彼女にだけは負ける訳にはいかないの、何があっても・・・・・」

(室井は、自身に言い聞かせるように言った)

 その頃、現政権のなりふりかまわぬ権力行使の一環として、総務大臣官房への呼び出しを受け、隅田は総務省へ行った。そこで、これでもかというほど露骨な嫌がらせを受けていた。それは、マスコミ各社経営責任者殿との書き出しで法令に則って、選挙期間中の報道は一党一派に偏ることなく、公正公平無私の報道に徹する事を免許交付者である総務大臣に誓約し、万が一誓約に反する事があった時には、免許を返上いたしますとの誓約書に署名させられたのである。これは、事実上どんなに小さな政党も大きな政党も放映時間が同じでないと放送できないとも受け取れる訳で放送時間枠を考えると選挙に関する報道を控えるか、五分、十分の放送時間に短縮して全ての立候補者の様子を放送するしか方法はなかった。渡部から隅田が呼ばれた。

「随分とえげつないやり方で政府は出てきましたね。」

(隅田が言った

「お前さんとこ何か影響は?うちは系列の地方局に警告が早速あった。次には処分するとしてその地方のテレビ局の社長が始末書を書かされたそうだ。」

(渡部が状況を言った)

「うちは、未だ系列局含めてありません。」

「これでは、我々が描いたマスコミ戦略が狂ってしまう。未だ公示前なのに凄い締め付けだ。」

(渡部が苦々しげに言った)

「そうですよね、日本初の女性総理誕生か?とセンセーショナルな見出しで一面を飾ろうかと密かに思いを巡らせていたのに、正直言ってあの誓約書の事を考えると竦んでしまう。これは言論統制ですよ。」

(憤慨が伝わるような口調で隅田が言った)

「実は未だ極秘中の極秘なのだが、公示日当日に爆弾を仕掛けたんだ。この爆弾で一気に奴らを潰してやるぞ!」

(テロリストの様な言葉で渡部が言った)

「公示日に爆弾?極秘中の極秘?」

(さっぱり分からないという様子で隅田が言った)

「悪いが例え君でも今日は言えない、聞かないでくれ!だが、公示日当日には分かる。かなりの破壊力を持った爆弾だ。」

(奥歯に物が挟まった様に渡部が言った)

「わかりました、公示日を楽しみにしています。」

(隅田は言った)

 その頃、室井良子は選挙区で選挙活動に全力投球だった。小学校の同級会、同窓会、同じく中学校の同級会、同窓会、高校の同窓会への出席だけで日々のスケジュールは埋まり、また選挙区内に散らばっている小学校の同級生、同窓生がミニ懇親会を開いてくれ、文字通り草の根選挙を展開していた。有難い事に同じく選挙区内に散らばっている同級生、同窓生が後援会を立ち上げてくれ、日に日に後援者が増えていった。

 一方焦ったのは中田真弓である。与党という事で、選挙区内の首長を連日引きまわしては人の集まる所を挨拶に回り、公共事業を受注している会社には、時には県知事まで引き連れて挨拶に行くという露骨な威圧的選挙を展開していた。

 自身の後援会には身内という事もあってくだけた語り口で呼びかけていたが、その口調にいつもの様な余裕がない事を敏感に後援者達は感じていた。

「今度ばかりは本当にやばそうだね?」

「相手が悪いよ。同じ女性でしかも相手の方が別嬪さんとくれば、男衆の票が怪しくなってくるもの・・・・・」

と言った様な声が漏れ伝わってきていたのである。

しかし、室井良子も順風満帆でもなかった。

仕事を絡めて攻勢を掛ける中田真弓陣営に、今までどおり仕事が欲しかったらあのポスターを剥がせと露骨な妨害をされていたのである。

そこで室井良子は隠れキリシタン作戦に打って出た。室井良子のポスターと中田真弓のポスターの両方を張る作戦だ。後援者であることを意味し、並べて貼ることにより容姿に勝る室井の方が引き立つ。それでもいわれなき圧力を受けたら、同じにポスターを張らせてあげたのに中田陣営は室井のポスターを剥がせと言ってきた、と隣近所に言い触らすという作戦である。

この隠れキリシタン作戦など一連の知恵を授けていた陰の参謀は、当選回数10回を誇る平岩俊介だった。その経験に裏打ちされた選挙戦術は、確実に有権者の心を捉えていった。



そしてそれぞれが運命の公示日を迎えた。



to be continued...






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