小説「政権奪取!」 13


「なにっ、あの中田女史と一騎打ちを演じるというのか?そりゃ楽しみだ!」

「前回選挙では民自党候補に一万七千票差まで詰め寄られ、かつての神通力は無くなっていると言われていますが、決して侮れません。」

(平岩が物心両面でのフォローが必要との認識を与えておこうと、入念にメンバーに説明した)

「金や人の心配はこちらで致しますから、ただ室井先生は当選する為のことだけ考えて選挙戦を戦ってください。何せ党首であり内閣総理大臣になって頂くには、室井先生自身の当選が必須条件ですから。宜しくお願いいたします。」

(信じられないほど謙虚に渡部は言った)

「心配ご無用!室井女史は圧倒的大差で当選します。実は室井女史が選挙応援に行って現在当選している保守系候補者は、殆どが相手候補と二倍以上の票差で勝利しています。一例を挙げるとしたら、平岩さんが支援していた静岡の長内武雄君がいい例で、彼の場合三倍近い大差で勝利しました。室井女史の強みは、保守層の男性のみならず一般女性に支持される強みを持っている事です。最近我々が主催するシンポジュームでも参加者の六割が女性です。その女性達のお目当ては、室井女史の講演を聞く事です。ですからろくに政策を語らず、政治漫談と他人の誹謗中傷しか言わない中田真弓候補より、確実に有権者の信頼を得ると思われます。私が保証します。だからお願いです、党綱領を基にした政策要綱も室井女史の思いのままに作らせてあげて頂けないでしょうか。無論最終チェックを今回のメンバーで受ける事は当然と心得ての事です。」

(久保は何時になく熱っぽく室井の優秀さをアピールした。そしてそれを聞いていたメンバーは久保の生真面目さを知っているので、その言葉の何処にも誇張が存在しない事も知っていた。)

「よかろう、それで我々は異存ない。」

(大勲位が言った)

 こうして、政策要綱も室井、久保、平岩の三人で原案を作成する事になった。

三人は時間を割いて極力、室井の理事長室に集まって政策要綱の原案作りに没頭した。

第一条の自主憲法制定では、その前段として憲法9条の陸海空の戦力を保持せずの記述を自衛の為の防衛軍を保持し、国民の生命財産及び領土領海を防衛すると改め、より強くその事を担保する為に日米安保を維持し、相互に自国の防衛に資するとの表現で集団的自衛権を容認する姿勢を明確にしていた。

 第二条、財政危機に対しての対応としては消費税を10%に引き上げると同時に所得税、相続税の最高税率を以前の70%に引き上げるが、所得税で一億円以上、相続税で5億円以上収めた納税者には国会議員待遇のJRパスを交付するとの恩点も明記した。そして積み上がっている赤字国債の解消策として、国有資産の売却と無利子国債の発行で残高を圧縮するとし、国家公務員、地方公務員給与に関しては税収比例とし、税収が減るとそれに比例して、給与、賞与が削減されるシステムを導入するとした。

 第三条、教育再生では、小学校五年生からは現行の「よい、普通、もう少し」という三段階評価を「5、4、3、2、1」の五段階評価に改め、中学校での評価体系との統一を図り、合わせて絶対評価と相対評価の両方を保護者に提供する事で保護者により正確な成績評価を提供するとした。

 第四条のエネルギー資源の確保については、現行の化石燃料や原子力を活用しつつ、漸進的にメタンハイドレードや海水から容易に得られる水素を燃料とする、水素カーや水素エネルギーによる発電設備を開発し、脱化石燃料を目指す事を要旨とする総合エネルギー政策の作成を明記した。

 第五条、国民の道徳、順法精神の再構築では、犯罪と刑罰の抜本改正により特に窃盗犯、詐欺犯に対して現行の刑事罰の他に確定した被害金額に対しては、国としてその支払いを迫り、払えない時は、労役を持ってその弁済に資するとした。逃げ得を許さず、多額の弁済不能の詐欺や窃盗を働くと生涯労役に服する事になり、結果としてこの制度の導入により再犯や被害を激減させるとしている。

 他には、あの渡部が隅田に熱く語った名古屋から大阪経由関西国際空港までのリニア新幹線の建設や交通弱者である老人と免許取得ができない年少者への交通政策として、ゴンドラリフト網の整備による都市交通システムの整備など、どれもこれも今までにない斬新なアイディアと画期的な思考による具体的な政策が明示されていた。

 また防衛関係では、僻地離島の防衛に関しては60歳で定年退職した自衛官、警察官、海上保安官の中から、5年契約の再任者で若年支給の年金の他に15万から20万円の報酬で、現代版防人を募り、島での住居光熱水費を全額保証する事でその任務にあたって貰うとしていた。これにより島の防衛、治安維持を確保する案になっていた。

 環境政策として、室井が久保、平岩に向かって訴えた政策も、真理をついており今すぐにでも実行すべきものであった。それは・・・

「私はかねがね思っていたけど、日本には資源がないのだから徹底したリサイクル、リユース、リニューアルを国の政策として推進すべきだと思うの、例えば使い古した携帯電話、一万台で金三百グラムが回収でき、それは、金鉱脈から金を採取するより効率がいいと言われて久しいのに中々そのビジネスが軌道に乗らない。結局、最終処分場に埋められてしまう事になる。他の電子機器製品全般に言える事でしょう。私が小学生の頃は、あの選挙区でも盛んに小学校の行事で廃品回収があり、各家庭からビール瓶や酒びん、古着、新聞、雑誌や段ボールが集められリサイクルされていたの、それなのに現在ではコスト削減を錦の御旗にして、資源再生よりコストの安い新製品を量産して利益を挙げようとする。環境省まで作った国でこんな事おかしいでしょう。だから私は世界に冠たる建設会社はできたから、今度は、世界中から仕事が殺到するビルの解体会社を創りたいの。ただ解体するではなく、解体されたビルを鉄筋、ガラス、アルミ窓枠、砂利、砂、セメントにまで再資源化する解体専門会社をビジネス化して、古いビルを壊して建て替える際は、壊すビルが最低でも五割以上再生されない場合には建設許可しないような施策が必要だと思う。この技術をいち早く確立できれば、世界中から仕事の依頼が来るはず。とにかく今回の中国との関係の中で資源に関しては自前で対応する事の大切さを教訓として学んだはずよ。リサイクル、リユース、リニューアルを日本国として推進するチャンスです。」

「いやあ驚いたなあ。こんなに傍で一緒に仕事をしていたのに、君が安保外交問題の他にこんなにも考えていたなんて、全く気付かなかった。」

(久保が驚嘆して言った)

「正に、政策といい、政治理念といいとてもレベルが高い。私も敬服した。」

(平岩が言った)

「お褒め頂いて光栄だわ。でももう一ついいかしら。それは漁業政策の件なんだけど、今日本では、まぐろ、かつお、ヒラメ、鯛、エビ、蟹まで養殖が可能になっている事はご存知?広がる海洋汚染の問題を考えると近い将来、養殖魚しか安全な魚類が無くなってもおかしくないでしょう。そこでこの養殖を使って、例えば水田でエビを養殖する事で中山間地域の産業と今までどおり水田に水を蓄える事で、治水に繋げるような政策をすべきだと思うの。」

「確かに、今までの減反政策は完全に失敗だ。その案なら衰退した農業と漁業を同時に再生できるかも知れない。しかも所管庁はどちらも農林水産省で、役所を跨がないからその気になればやってやれない事はない。いや是非やるべきだ!」

(平岩が政治家らしく所管省庁の問題にまで踏み込んで言った)

「でも畜産業は置き去りになりかねないかな。」

(久保が心配して言った)

「それも私なりに考えてみました。聞いてくれる?」

「勿論。」

(二人が声をそろえて言った)

「あの悲惨な宮崎の口蹄疫問題を教訓にしたら、感染リスク管理の為にも是非、離島を活用すべきだと思うの。これによって離島の過疎化に歯止めを掛けられるでしょうし、万が一家畜伝染病が発生しても格段に防ぎやすくなる。一考の余地はあると思うの。

「それもいい案だ、離島振興策になり得る。」

 こうして政策の話は尽きなかった。三人はここで挙げられた政策に吟味を重ね、あの御前会議に掛け、当然の如く承認されたのであった。



to be continued...





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