小説「政権奪取!」 8

2011/09/12

小説「政権奪取!」

t f B! P L

 そう言って長内に見送られて、平岩は渡部達が待ち受ける通称御前会議に向かった。この通称御前会議は、大勲位、渡部、隅田、平岩、佐野を以て開催され、お金が絡む問題の時に適宜平城譲が呼ばれて行われていた。

 集まった会議メンバーは、一様に気難しい顔をしていた。そんな中、声を荒げて大勲位が発言した。

「党首の人選が出来てこそのプロジェクトだったんじゃないのか!」

「その通りです。とにかく、難しい事は承知の上で、有りとあらゆる方策を駆使して、彼女を口説き落とすしかないのです。」

(佐野が答えた)

「それを誰がやるんだ?」

(齢のせいか気が短くなった大勲位が、再び語気を荒げて言った)

「それをこれから話し合うのです。」

「わしが口説いてみようか?」

「いえ、大勲位には我々が口説いてだめだった時まで、温存させて頂きます。」

(少し黙っていろ、と言わんばかりの剣幕で渡部が発言した)

「平岩さん、貴方が一度口説いてみてはくれんか?」

(佐野が懇願口調で発言した)

「それは一向に構わないが、誰が口説いて断られたのか全ての経緯が分からないと、おいそれと引き受ける訳にはいかない。」

(渡部が言った)

「私が直接アポを入れた上で会って口説いたが、見事にかわされた。とりつく島がなかった。」

「そうですか。そうだとすると私が口説いても結果は同じです。私は立場上選挙の応援をお願いする立場で、取引関係で言ったら劣位に立っている立場ですから、結果は目に見えています。」

「なるほど、政治家では無理という事ですか・・・」

(隅田が発言した)

「彼女は、幕末の英雄西郷隆盛と同じく、命も要らず名も要らず、官位にも金も要らずという心境ゆえに本当に困ってしまうのだ。こんな言い方したらセクハラといわれてしまうだろうが、女にしておくのは勿体無い!男として生まれて政治家になっていたなら間違いなく総理になっていたと思う。」

(渡部が今の彼の心情を吐露した瞬間だった)

「そうだ!あの人が居ます、あの人が!」

(隅田が叫ぶように言った)

「誰だ!それは。」

(堪らず大勲位が言った)

「久保貴平さんです。」

(隅田が答えた)

(それに対して、渡部が理由を問いただした)

「君は私では断られた事が何故、久保貴平氏であればうまく行くと思うのかね。」

「それは先程言われた、取引関係でいえば久保さんが優位に立つからです。あの彼女が理事長をしている保守系シンクタンクは、当初久保さんを理事長にする事で計画されていたのだそうです。それを、久保さんが彼女のプレゼンスのセンスや講演での巧さに惚れ込んで『女であるからといって遠慮する事はない、貴方が理事長をやりなさい』と背中を押したとの事です。私はこの話をご本人の久保さんから直接聞いています。」

「それなら脈があるかもしれないな。」

(作戦参謀的存在の佐野が発言した)

「問題は、理事長を室井さんに譲ってしまうような人ですから、やはり命も要らず、名も要らず、官位や金も要らずそのものと言える人ですから、このプロジェクトの趣旨をしっかり説明して、ご本人の賛同を得る事が何よりの策かと存じます。」

(隅田が必死に、訴えた)

「わかった、慎重に進める為にそれぞれ役割を分担しようじゃないか、先ず此処へ呼びだす役割を担ってくれるのはこの中では誰が一番適任かな?」

(渡部が隅田の顔を見ながら尋ねた)

「私が知る限りでは、一番親交が深い平岩先生が敢えて申し上げるなら適任かと思われます。」

(顔を見ながら尋ねられたら答えざるを得なかった)

「私で皆さんが異存なければその役目喜んでお引き受けいたします。」

(平岩は、平岩らしい言い方で応諾した)

「宜しく頼む!」

(大勲位が偉そうに依頼した)

「ならば、このプロジェクトの趣旨や概略を私の方からご説明させて頂き、大勲位、会長に頭を下げてお願いして頂く段取りでは如何でしょう?」

(作戦参謀らしく全員の役割を示して佐野が提案した)

「よかろう、それでやろう。」

(この大勲位の一言で役割が全て決まった、その時)

「あのーひとつ提案があるのですが、お聞き頂けますでしょうか?」

「なんだね?」

(渡部が少し怪訝そうに言った)

「久保貴平さんという方は、大義や正義真理を大切にされる方です。是非この会のメンバーに加えて頂く訳にはいかないものでしょうか?その為なら私を除いて頂いても構いません。」

(隅田は、プロジェクトの成功の為には久保の力と室井良子の党首就任は欠かせないと判断していた。その為なら、自分はメンバーから外されても構わないと真剣に思っての提案だった。)

「それはとてもいい提案だ!大勲位、会長私からもお願い致します。無論我々よりも柔軟な思考の持ち主である、隅田氏の続投を保障した上での事ですが・・・」

(平岩が即答ともいえる速さで発言し、隅田と平岩を除く全員が首を縦に大きく振る事でこの件は了承された。)

「では、それぞれの役割や当面の方針が決まった事を受けて、本日の会議をお開きといたします。」

(佐野の司会者の様な一言で、会は終了しお開きになった)



to be continued...



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