「活原発」のち「部分的脱原発」


先週になりますが、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の副所長以下が市議会にお見えになり、私の所属会派である市民クラブで福島第一原発の状況と柏崎刈羽原発の津波対策について状況報告をして下さいました。

要点をまとめますと、福島のことについては事故発生及びその後の対処が不適切であった点は否めませんが、今行われている処理を安定継続出来ればこれ以上の原発からの放射性物質の拡散は無いということでした。刈羽原発については4月中に緊急安全対策と訓練を実施してあり津波災害に対する備えはできている。今後2年程度をかけて建設される防潮堤と非常電源系の見直しをすることにより心配はないとのことでした。

我々には権限がないため、彼らや政府の発する情報を信じるほかはありませんが、彼らも問題の重大さは強く認識しており、今出来うる限りの対策は行っているということはよく分かりました。引き続きご努力をお願いしたいと思います。

以上、現在進行中の事実についてご報告致しました。以下は私の視点での見解です。私は原発は安全確保を施した上で全機通常運転するべきであると考えます。

まず感情的な面から考えてみます。
今回の事故に問題は多々有りました。しかし、我々人類は失敗から学んで改善し、更なる進歩を弛まなく続けてきました。例えば我々が日常的に用いる「火」を考えてみてください。火との出会いは山火事など偶然であったでしょう。その出会いと取り込む過程で原始人類は焼死したり集落が全焼したり、様々な犠牲を払って今日の我々は火を使いこなすに至りました。その今日でさえ、火の不始末によっておびただしい数の人(国内毎年2000人程度)が犠牲になっています。しかし我々は火を忌避することはありません。これまでの長い経験と科学的な理解が火との共存を許容しているのです。火傷や一酸化炭素中毒の生理学的化学的な理解、その対処方法も確立されお茶の間に浸透しています。私は核技術も同じ事だと考えます。核分裂反応の理解、放射性物質の理解、放射線障害の理解、統計結果の冷静な分析が進み対策が講じられれば、何れ核アレルギーはなくなると信じています。今回の教訓に大いに学び、万全の対策を施して更に安全な原発を目指すべきです。

次にエネルギー政策からの観点です。
これまでにも原油に依存しすぎたことにより、我々は様々な危機に直面してきました。その最たるものは先の日米開戦であり、その後も石油危機や現在進行形の中東の石油利権をめぐる不安定化など、枚挙に暇がありません。そういったリスク分散という観点から、また二酸化炭素排出の観点からも高効率の原子力発電が評価されてきた矢先に今回の事故が起きました。その余波は日本から溢れ出して世界中のエネルギー政策に大きな影響を与えるに至ったことは説明するまでもありません。その結果、各国の脱石油依存のベクトルは反転し、またもや石油利権をめぐる争いが激化してゆきそうな雰囲気です。こうなった原因の一部は、(脱原発市民運動的な意図かもしれませんが)民主党政権の危機管理及び情報発信の稚拙さと東京電力の体制に依るもので、日本のリーダーが世界のリアルな大局を理解できていないことにより、世界にご迷惑をかけてしまった出来事と言えるでしょう。

そして産業的な面です。
脱原発による電力料金の上昇は、国内から生産拠点を国外移転しようとする企業が増えている流れを加速させます。そうなれば国内の雇用は更に悪化し、ますます景気が冷え込むことは自明です。それを解決する(かもしれない)再生可能エネルギー特別措置法案は痛し痒しです。企業にとっては電気代を国民に広く肩代わりさせることにより助かりますが、国民はふざけるなと声をあげています。しかしこの法案がなければ再生可能エネルギー分野に民間が参入するハードルが高くなります。私は本法案を通し、その上で原発も含めた様々なエネルギー源を電力供給の最大何%と上限付きで分野拡大を奨励し、非常時のリスク分散を図るのと同時に日本の持っている技術を実用レベルに引き上げて運用実績を作り、世界に売りだしてゆくべきだと考えます。

以上、「活原発」のち「部分的脱原発」と意見を述べさせて頂きました。
少々技術的な話になりますが、原子炉は地震が起きると必ず緊急停止しますよね。今回の事故を振り返ると、①地震で炉心は壊れず、②津波で外部電源がなくなった。だったら原子炉を停止しないで、主電源を維持して冷却システムを運用していれば良かったのではないか?と思ってしまいます。海水に冷却を全依存するのは改めるべきですし、配線上の都合で主タービンの発生電力は所内で使えない等あるのかもしれませんが、発電のメインシステムを監督するフィードバックを介して配管断裂などの異常があって初めて停止するようなシステムではないようです。恐らく停止しようがしまいが、危機的な状況に陥った場合の結果は大して変わらないのではないかと思いますが如何でしょうか。「何で必ず止めるの?」と重役に質問したら鳩が豆鉄砲を喰らったようなリアクションでしたが、止めないという選択肢も状況によってはあるのではないかと思いました。

平成28年9月4日追記
この度の長岡市長選挙では、多くの長岡市民が柏崎刈羽原発の再稼働に不安をお持ちの現状を真摯に受け止め、当選した暁には市長として「安全性の検証なくして再稼働無し」のスタンスで臨みます。ご理解の程、どうぞよろしくお願いいたします。


おしまい



1 件のコメント:

  1. 【感情的な面から】
    火事を例えにお話しされていますが、随分無理があると思います。
    今回の原発事故で、約10万人が避難しています。
    火事が原因で、こんなことは有り得ないと思います。
    被爆をすれば、何十年後かに健康被害が出る可能性があります。・・・出るでしょう。
    火事が原因で、そんなことがありますか?
    汚染された地域は、何十年、何百年と健康な土地には戻りません。故郷をなくします。
    そして、作物が育てられなくなります。
    火事が原因で、故郷の土地を失う事がありますか?
    作物を育てられなくなりますか?

    【エネルギー政策】
    ウランも再生不能資源です。
    いずれ無くなります。
    次世代エネルギーは、石油でもウランでもなく
    自然エネルギーだと思います。
    自然エネルギーの開発が必要だと思います。

    原子力発電所が安全か否かの問題よりも
    “核のゴミ”をどうするんでしょうか?
    1年間原発を稼働させると
    “低レベル放射性廃棄物”がドラム缶で約1000本でるそうです。
    “高レベル放射性廃棄物”は無害化するのに100万年かかるそうです。
    これらを誰が“責任”もって管理するんでしょうか?
    原子炉も老朽化すれば“廃炉”になります。
    福島の原発は“廃炉”になりますが、将来的にどう管理していくんでしょう!?

    雇用を生み出すために、原発が必要ですか!?
    今回の事故で、学ぶ事が沢山あるのに。・・・
    事故になったら、雇用どころの話しじゃないと思います。
    住む所も、健康も失いますから。

    人間が責任もって管理出来ないエネルギーには反対です。
    私も、子供が居ますが、安全な日本で生きて欲しいと思います。

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