小説「政権奪取!」 4






「失礼いたします。お連れ様がお見えになられました。」

(と女将が断ってから襖を開けると、そこで四人が何やら談笑していた。当初から言われていた大勲位の他に平岩、佐野と元財界重鎮であった平城譲の顔もあった。)

「皆さんお待たせして申し訳ない、今日から我々の同志となった、S新聞社社長の隅田君だ、宜しく頼む。」

「隅田です、本日を持ちまして御仲間に加えさせて頂きます。若輩者ですが何とぞ宜しくお願い致します。」

(挨拶しながらふと隅田は思った、若輩者ですが何卒よろしくお願い・・・こんな挨拶ここ数年した事ないぞ、俺だけ六十代あと皆七十、八十代。戦国時代であれば、この人達が謀反を企て天下を取るというのか?すげー)

「いや、ようこそ我が同志そんな所に居ないで、先ずは私に一杯、注がせてはくれんか?」

(大勲位が最初に声を掛けてくれた。)

「さあさあ、どうぞ、どうぞこちらへ」

(流石大勲位の元秘書の佐野が、そつの無い対応で大勲位の席まで緊張している隅田を案内してくれた。)

「どうぞ、お見知りおきください。」

(そう言って平岩が大勲位の杯の後、お酌してくれたその時、隅田の手は緊張のあまり震えが止まらなかった。落ち着け、落ち着け、、、隅田は自分に言い聞かせていた)

 暫く、自己紹介やら雑談やら談笑の後、唐突に隅田が渡部に問いかけた。

「金の工面の目処は付いたと先程、仰って居られましたが、どうやって工面できたのですか?」

「ほお、やはり金の事聞きたいか?」

「それは、勿論です。新しく政党を立ち上げるには、最低でも数十億は必要だと言われて元厚生大臣だった、桝形さんは、仕方なく既存政党を引き継ぐ形で、新党を立ち上げましたから、それが大同団結させて政権奪取する新党となれば、数百億くらいの資金が必要ではないかと思います。そんな大金が工面できているのですか?」

「ああ、できているとも。」

「どうやって工面できたのですか?」

「金の事に関しては、財界出身の平城譲君から説明して貰おう。」

「分かりました、ご指名ですから私からご説明させて頂きます。隅田さんが思われるほど資金集めには苦労しませんでした。それは、今の政権のばら撒き政策に、ことの他我々の同志が憤りを持っている事が我々に味方してくれました。ご存知ですか?現行相続税法では、その相続税課税対象額が三億円を超えると五十パーセントの相続税が課せられます。
あの、信じられないような感性の元総理ならいざ知らず、脱税してまで生前贈与しようなんて不埒な考えをする者も居りません。そしてこの超高齢化社会という現実の中では、思いの外、資産が積もり積もって、平均で百億前後の資産を有し、万が一相続となれば全員五十パーセント課税が必死で、現政権のばら撒きの格好の財源にしかなり得ず、それならば、資産マイナス負債の原理を活用してそれぞれの資産を担保にして借入金をつくる形にした上で、新しくできる保守新党構想の浄財に提供しようではないかという事になりました。その為1人当たりの浄財額としては考えられないほどの大口の提供となり、資金手当てが付いたのです。」

「ほー、それは凄いけど、しかしそのやり方だと担保設定者に対して債権が残り、相続の際、相続人との間で揉める元になりませんか?」

「大丈夫、それにも対応済みで、我々は全員遺言書を認めてあり、この浄財分の借金を差し引いて相続させる旨を明記しており、それが嫌なら相続を放棄しろ!と記してあります。現代令終会として、自分の命を全うする為に自分自身の資産を使う訳ですから誰にも文句を言わせない覚悟なのです。」

「考えて見ればそうですね、自分が苦労してつくった財産の半分をあの現政権の訳の分からないばら撒き政策に使われてしまうかと思えば、生前に目的をもって使ってしまった方が納得がいくという事ですね。」

「そうだ!そうなんだ。」

「でも皆さんのそんな思いが似たような境遇の人達に知れ渡ったら、もっと資金が集まることも想定されますね。」

(その時、平岩が言った)

「隅田さん、だから我々は命懸けなのです。この真正保守新党で政権を奪取して、世界に凛とした国家日本を再現するという使命が我々にはあります。貴方にもその一翼を担って頂くという事で、我々と同じ命懸けで、貴方の分野を担当頂きたいのですか、よろしいですか」

(隅田は、はっとした、お金が面白いように集まったという平城の話に浮かれて居た自分に対して、昔の侍の様な気迫と鋭い眼光で見つめる平岩に竦みそうな思いを必死に堪えて言った)

「謹んで、やらせて頂きます。若輩者ですが何卒よろしくお願い致します。」


その時、隅田は以前来た時と何か違うと違和感を感じていた。少し冷静さを取り戻しその事に気が付いた。


(そうか、あの時と違って綺麗どころが居ないのだ)


俗世間一般に、向島の料亭には芸者が付きものとされているが、呼ばれていなかったのだ。そこに彼らが如何に真剣で、情報漏れに関して必要以上に神経を尖らせているかが伺えた。そしてこの極秘プロジェクトが、間違いなく今後の日本の運命までも左右してしまう事をこの時、隅田は確信した。




to be continued...




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