小説「政権奪取!」 1



第一章 (極秘プロジェクト始動)


それは、尖閣諸島沖での不法操業の中国漁船船長逮捕、拘留が引き金となった。次から次に繰り出される中国からの嫌がらせとしか言いようがないカードに対して当初は、粛々と国内法に法って対応するとしていた日本政府が、四人の邦人拘束との一報で一瞬にして現政権は思考停止に陥った。

しかも総理も外務大臣も、ニューヨークの国連総会に出席中で不在の中、何者かの画策によって極めて不可解な決断が下された。その拘束理由が軍事施設のビデオ撮影と伝えられ「国家反逆罪」や「スパイ容疑」の適用如何では死刑もあり得ると指摘されるや否や状況が一変したのだ。突然、日本中のテレビに速報が流れ那覇地方検察庁は、逮捕していた中国人船長を処分保留のまま釈放してしまったのである。この致命的な外交での敗北を喫した日本政府に対して、現政権から一日も早く政権を奪取すべく、ある極秘プロジェクトが密かに動き出した。

「わざわざ呼びたてて済まん」

「何を仰います、大先輩から直々にお電話頂いた以上、私の方が伺うのが当然です。」

「まぁ掛けたまえ、早速、本題に入らせて貰うが老い先短い私としては、戦前、戦中、戦後、大正、昭和、平成と生きてきて、今ほど情けない思いをしている自分が惨めでならんのだ、しかも、その情けなくて、惨めな状況を創った張本人として死んで行くのが忍びなくてならんのだ。」

「それで、最近うちよりも社説が右寄りになっているのですか?」

「それは心外じゃ、君のとこよりは未だ中道のつもりだが・・」

「私も聞屋ですからこの際だからお聞きしたいのですが、最近できたあの政党の陰のスポンサーは、本当に大先輩なのですか?」

「君は、佐野君が代表だからというマスコミの憶測を鵜呑みにしているのだろがまあ、当たらずとも遠からずという事にしておこう。それより、君は、命がけの秘密の重圧に耐える自信はあるか?」

「えっ、行き成り命懸けの重圧ですか?」

「そうだ、これから私の話す事を聞く以上、命懸けで聞いて貰わなくては困るのだ、何なら聞く前に此処を出て行っても構わんが・・・・・」

(隅田は、この齢八十を過ぎた老人の鬼気迫る思いに圧倒されそうになっていた。)

「そのお話を聞くには、命まで懸けなければならないほど、我々ジャーナリストにとって重要な情報だという事ですね?」

「そうだ!」

(隅田は、大きく深呼吸をして言った)

「分かりました、覚悟してお聞きします。」

「実はな、この不甲斐ない現政権を早急に解散総選挙に追い込んでもう一度、凛とした日本を取り戻そうという事で現代令終会総会で決ったのだが、金の面は何とかなるが問題は、民自党に政権を戻しても、今のままでは元のもくあみで益々日本の疲弊を招きかねず、それでは元も子もない。そこで、当たり前なのだが、政治理念、政治信念、政策で大同団結できる政治家を結集した新党を創り、一気に政界を再編せねばならないという結論に達したんじゃ」

「はあ、それで・・・」

「そこで、君の所にも力を貸して欲しいんじゃ」

「と言いますと・・・・・・」

「つまり、我々は以後連携してこの新しく大同団結させる政党を徹底してバックアップするのだ!手法は何でもいい、ドキュメンタリー、バラエティー、報道番組有りとあらゆるソースを総動員して、何が何でも政権交代を創りだして欲しいんだ、勿論社説は言うに及ばず、あの失敗に終わった八党相乗り政権の二の舞でもいいから、とにかく現政権を変えないと日本が滅んでしまう、だから何としても民政党政権を倒さねばならないんだ。」

「そこまで仰るのであれば、おおよそのメンバーは決まっておったり、決りつつあるのですよね?」

「ああ、君の想像のつくあたりは勿論メンバーに入っていると思うよ。」

「例えば、民政党の渡瀬周蔵や原田仁志等もメンバーですか?」

「命を掛けてこの私に質問したのなら、答える用意はあるが・・・・・」

「勿論そのつもりでお聞きしています。」

「分かった、このメンバーの第一条件は、性根の据わった保守である事だ、今所属している政党は問題ではない。」

「でも、家と大先輩の所が組んだくらいで、マスコミでの優位性は、保証しきれません。」

「そりゃそうだ、うちだって、お前さんとこだってそうそうスポンサーの意向を無視して、この新しくできる政党を身贔屓していたなら会社自体が潰れかねんからな」

「そうですよね」

「何か秘策でもあるのですか?」

「勿論じゃとも、取っておきの秘策がある。」

「な、何ですかその秘策とは?」

「済まんが今は言えん」




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